変形性股関節症の手術、最適なタイミングとは?
変形性股関節症の手術、最適なタイミングとは?
~「まだ早い」と我慢して、後悔しないために~
変形性股関節症と診断された患者様から最も多くいただくご質問の一つに、「いつ手術をするべきか」というものがあります。 結論から申し上げますと、手術の適切なタイミングは「患者様ご自身が必要だと感じたとき」です。
レントゲン画像では「前期・初期・進行期・末期」とステージ分類されますが、患者様が感じる「不自由さ」や「痛み」は、必ずしもこのステージとは一致しません。 初期でも日常生活に支障をきたすほどの痛みがある方もいれば、末期でも痛みをあまり感じず元気に来院される方もいらっしゃいます。そのため、手術の必要性は画像上のステージだけでなく、ご自身の生活の質(QOL)や痛みの感じ方に大きく依存します。
とはいえ、医学的に考慮すべき「タイミング」の重要なポイントがいくつかあります。
1. 手術を遅らせることによる「不可逆的な変化」のリスク
手術のタイミングを考える上で最も大切なのは、「手術を遅らせたことで、取り返しのつかない変化が起きていないか」という点です。「あの時手術をしていればよかった」と後悔しないために、以下の点に注意が必要です。
関節の「硬さ」と可動域制限
変形性股関節症が進行すると、骨棘(骨のとげ)ができ、インピンジメント(骨同士の衝突)によって関節の可動域が制限されます。また、痛みから逃れるために動かさないでいると、周囲の筋肉や腱、靭帯といった軟部組織が硬くなってしまいます。
人工股関節手術を行えば、関節自体の動きは劇的に改善します。しかし、長期間の放置によってガチガチに固まってしまった筋肉や腱を、手術ですべて柔らかくすることは困難です。 術前の関節が硬いほど、術後も可動域制限が残りやすくなります。「早めに対応することで、術後のスムーズな動きを維持できる可能性が高まる」と言えます。(術者としては少し硬いほうがリスクの少ないOPとなりますがこの点については今後お話できればとおもいます。)
急速破壊型関節症の可能性
稀ではありますが、注意すべき病態に「急速破壊型関節症」があります。これは数週間から数ヶ月という短期間で骨の破壊が急速に進み、人工関節を設置するための「骨の土台」すら失われてしまうリスクがあるものです。 強い痛みを伴うことが多いため、急激な痛みを感じた場合は早期受診が不可欠です。手遅れになると通常の手術では対応できず、特殊な再建術が必要になることもあります。
2. 「健康寿命」を意識した決断を
手術のタイミングを決める際は、「健康寿命(あと何年、元気で動けるか)」を意識してみてください。
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旅行に行きたい
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スポーツを楽しみたい
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お孫さんと遊びたい
90代でもアクティブな方はいらっしゃいますがそう多くはありません。誰しも抗えない年齢相応の身体機能は確実に存在します。50代・60代の大切な時期を、痛みを我慢して過ごすのはもったいないことではないでしょうか。今、痛みを理由に運動や移動を控えている方が、何もせず70代・80代になって急に元気に動くことは可能でしょうか?「動ける年代に、しっかり動ける体でいること」は非常に重要です。
3. 「痛みのない生活」を体験してみる
私は患者様に「痛みを理由に、行動を変えていますか?」と問いかけています。もし、本来やりたいことを痛みによって制限されているなら、一度ご相談ください。
例えば、ブロック注射などで一時的に痛みを軽減させ、「痛みのない状態」を体験していただくことも一つの方法です。「痛みがなければ、こんなに動けるんだ」という経験を基に、ご自身が送りたい理想の生活を医師と共有してください。それが、納得のいく治療選択への第一歩です。
結論として
変形性股関節症の手術は、痛みや生活の質を考慮し、患者様ご自身がその必要性を感じたときが最適なタイミングです。 しかし、遅すぎることで良い結果を得られなくなるリスクもあります。症状や生活の変化に気を配り、医師と十分に相談して決断していただきたいと考えております。寒さが本格化し、関節の痛みを感じやすい季節となりました。どうぞ温かくしてご自愛ください。(2025/12/9 院長 佐藤啓)

