- 股関節の痛み、どこが痛む?
部位別の原因と対処法 - 股関節の前面(脚の付け根・鼠径部)の痛み
- 股関節の側面(太ももの外側)の痛み
- 股関節の後面(お尻)の痛み
- 股関節の内側の痛み
- 股関節の上方の痛み
- 自分でできる対処法と受診の目安
- 以下のような場合は、早めに整形外科を受診しましょう
- よくあるご質問(Q&A)
股関節の痛み、どこが痛む?
部位別の原因と対処法
股関節の痛みと一口に言っても、痛む場所によって原因となる病気や状態は異なります。股関節が痛いとおっしゃる患者様の原因が腰だったというようなことは日頃よく経験します。部位ごとに多い原因をまとめます。
股関節の前面
(脚の付け根・鼠径部)の痛み
この部位の痛みは股関節の異常で最もよく見られます。
考えられる主な原因疾患・状態
変形性股関節症
(へんけいせいこかんせつしょう)
最も代表的な疾患です。加齢や体重増加、過去の股関節の病気(臼蓋形成不全など)により、関節軟骨がすり減り、骨が変形して炎症や痛みが起こります。初期には立ち上がりや歩き始めに痛み、進行すると安静時にも痛むようになります。
股関節唇損傷
(こかんせつしんそんしょう)
股関節の受け皿の縁にある軟骨組織(関節唇)が損傷する状態です。スポーツや日常生活での繰り返しの動作、股関節の形態異常(FAI:大腿骨寛骨臼インピンジメントなど)が原因となります。特定の動きで鋭い痛みや引っかかり感、詰まり感が出ることがあります。
大腿骨頭壊死症
(だいたいこっとうえししょう)
大腿骨の先端部分(大腿骨頭)への血流が悪くなり、骨組織が壊死してしまう病気です。ステロイド剤の多用やアルコール多飲と関連があると言われています。初期は無症状のこともありますが、進行すると急な強い痛みで発症し、歩行困難になることもあります。
腸腰筋炎(ちょうようきんえん)・
腸腰筋腱炎(ちょうようきんけんえん)
股関節を曲げる筋肉である腸腰筋の炎症や、その腱の炎症です。スポーツなどでの使いすぎが原因となることがあります。股関節を曲げる動作や、伸ばす際に痛みが強まります。
グロインペイン症候群
(鼠径部痛症候群)
サッカー選手などスポーツ選手に多く、鼠径部周辺の筋肉や腱、関節の炎症や機能障害が複合的に関与して起こる慢性的な痛みです。キック動作やダッシュなどで痛みが誘発されます。
単純性股関節炎
(たんじゅんせいこかんせつえん)
主に3〜10歳くらいの子供に見られ、風邪などの後に一時的に股関節に炎症が起こる病気です。急に股関節痛を訴え、足を引きずるようになりますが、多くは安静にすることで1〜2週間で自然に治ります。
股関節の側面
(太ももの外側)の痛み
考えられる主な原因疾患・状態
大転子滑液包炎
(だいてんしかつえきほうえん)
太ももの外側にある大転子という骨の突起部分と、そこを通過する筋肉や腱との間にある滑液包というクッション組織が炎症を起こす状態です。ランニングや長時間の歩行、転倒などがきっかけとなることがあります。押すと痛みが強く、痛む側を下にして寝られないこともあります。
中殿筋腱炎(ちゅうでんきんけんえん)・
小殿筋腱炎(しょうでんきんけんえん)
股関節を支える重要な筋肉である中殿筋や小殿筋の腱が炎症を起こす状態です。使いすぎや加齢が原因となります。歩行時や階段昇降時に痛むことがあります。
股関節の後面(お尻)の痛み
考えられる主な原因疾患・状態
坐骨神経痛
(ざこつしんけいつう)
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、腰の神経が圧迫されることで、お尻から太ももの裏、足先にかけて痛みやしびれが出ることがあります。股関節自体の問題ではないものの、股関節周辺の痛みとして感じられることがあります。
梨状筋症候群
(りじょうきんしょうこうぐん)
お尻の深部にある梨状筋という筋肉が硬くなったり炎症を起こしたりすることで、その下を通る坐骨神経が圧迫されて起こる痛みやしびれです。長時間の座位や特定の運動で悪化することがあります。
仙腸関節炎
(せんちょうかんせつえん)
骨盤にある仙腸関節の炎症で、腰痛やお尻、鼠径部に痛みが出ることがあり、股関節痛と間違われることがあります。
股関節の内側の痛み
考えられる主な原因疾患・状態
内転筋腱炎
(ないてんきんけんえん)
太ももの内側にある内転筋群の腱が炎症を起こす状態です。スポーツでの使いすぎや急な動きが原因となります。足を開いたり閉じたりする動作で痛みが強まります。
恥骨結合炎(ちこつ結合炎)
骨盤の前方にある恥骨結合という部分に炎症が起こる状態で、スポーツ選手などに見られます。鼠径部や股関節内側に近い部分に痛みが出ます。
股関節の上方の痛み
考えられる主な原因疾患・状態
上前腸骨棘/下前腸骨棘 付着部炎/剥離骨折
(じょうぜんちょうこつきょく かぜんちょうこつきょく ふちゃくぶえん れつりこっせつ)
上前腸骨棘には縫工筋、下前腸骨棘には大腿直筋という強い筋肉は付着します。スポーツ強度が高いときや、瞬間的に強い力がかかった場合、付着の炎症や骨折を起こすことがあります。
石灰沈着性腱炎
(せっかいちんちゃくせいけんえん)
筋肉の付着部付近に激烈な痛みを訴えて来院されます。内服で鎮痛コントロールするか、注射を行います。注射は痛みを伴いますが、局所麻酔薬やステロイド注入をすることで速やかに症状を緩和することができます。
自分でできる対処法と
受診の目安
安静
痛むときは無理に動かさず、運動や長時間の歩行を避けましょう。
冷却・温熱
急性期で熱感がある場合は冷やし、慢性的な痛みで血行を良くしたい場合は温めるのが有効な場合がありますが、自己判断が難しい場合は専門家にご相談ください。
ストレッチ
痛みのない範囲で股関節周りの筋肉をゆっくり伸ばすことは、予防や症状緩和に繋がることがあります。ただし、痛みが強くなる場合は中止してください。
市販薬
痛みが強い場合は、薬剤師に相談の上、消炎鎮痛剤を使用することも一つの方法です。
以下のような場合は、早めに
整形外科を受診しましょう

- 痛みが強い、または徐々に悪化している
- 安静にしていても痛む、夜間に痛みで目が覚める
- 発熱や股関節周囲の腫れ、熱感を伴う
- 転倒などの明らかな原因がある
- 足を引きずる、体重をかけられない
- 症状が改善しない、または日常生活に支障が出ている
- 子供の股関節痛
よくあるご質問(Q&A)
足の付け根が右(左)だけ
急に痛くなった原因は何ですか?
基本的には両側同時に痛むことは稀です。両側の臼蓋形成不全を背景とした股関節の不安定症からくる痛みの場合でも両側とも同時に出現することはあまりありません。片側だけの痛みは上記のいずれの疾患も疑われます。
股関節の痛みは20代女性に
多いのはなぜですか?
女性に股関節のトラブルが多いのは、骨盤のくぼみが浅く、加齢による変形に加え、生まれつき関節が不安定になりやすいためとされています。また、若い世代でも発症することがあり、スマホやPCなどのデスクワークは長時間負担のかかる姿勢であり、立ち仕事も股関節への慢性的な負荷につながります。
変形性股関節症ではありませんが診てくれますか?
当院では股関節痛全般を専門としており、決して手術第一のクリニックではございません。股関節痛に関してご相談がある場合は、お気軽にご相談ください。
股関節が「ポキポキ」鳴りますが、痛みはありません。受診が必要ですか?
痛みがなくても、頻繁に鳴る場合は一度ご相談ください。 音が鳴る現象は「弾発股(だんぱつこ)」と呼ばれます。痛みがない場合は経過観察で済むことも多いですが、関節唇(かんせつしん)や軟骨に負担がかかっているサインの可能性もあります。将来的な痛みを防ぐためのリハビリやストレッチ指導も可能です。
痛む場所が「足の付け根(鼠径部)」ではなく、「お尻」や「腰」です。それでも股関節が原因でしょうか?
はい、その可能性があります。 一般的に股関節痛は「足の付け根(鼠径部)」に出ますが、関連痛としてお尻の横、太ももの前や外側、膝、腰に痛みが出ることも珍しくありません。腰の疾患(坐骨神経痛など)と混同されやすいため、専門的な診察と画像診断での鑑別が必要です。
じっとしている時は痛くないのですが、歩き始めや立ち上がりだけ痛みます。
変形性股関節症や関節唇損傷の初期症状の可能性があります。 「動き出しの痛み(始動時痛)」は股関節トラブルの典型的なサインです。症状が進行すると安静時や就寝時にも痛みが出ることがあるため、動き出しの痛みの段階で受診し、早期にリハビリを開始することをお勧めします。
レントゲンで「骨には異常がない」と言われましたが、痛みが引きません。なぜですか?
レントゲンには写らない「関節唇(かんせつしん)」や「軟骨」の損傷が原因かもしれません。 レントゲンは骨の状態を見るのには適していますが、柔らかい組織(軟部組織)の損傷は写りません。頻度が多くはありませんので石灰化を見落としている場合もあります。当院ではMRI検査や超音波(エコー)検査などを用いて、レントゲンでは見えない痛みの原因を詳細に診断します。
FAI(股関節インピンジメント症候群)とは何ですか?
骨の形状により、股関節が衝突(インピンジメント)を起こして傷ついてしまう状態です。 生まれつき、あるいはスポーツなどの影響で大腿骨や骨盤の形が少し出っ張っていると、動かすたびに骨同士がぶつかり、その間にある関節唇や軟骨を傷つけてしまいます。これが痛みの原因となります。詳細はこちら。
股関節の痛みがある場合、すぐに手術が必要になりますか?
いいえ、まずは保存療法(リハビリや注射)から始めることがほとんどです。 痛みがあるからといって、必ずしもすぐに手術が必要なわけではありません。当院では、まずは理学療法士によるリハビリテーション、薬物療法、注射などを組み合わせ、切らずに治す可能性を追求します
リハビリだけで股関節の痛みは良くなりますか?
多くのケースで症状の改善が見込めます。 股関節痛の原因の多くは、股関節周りの筋力低下や柔軟性の欠如、体幹機能の低下による「使い方の癖」にあります。リハビリで正しい動きを習得し、関節への負担を減らすことで、痛みをコントロールできるようになる患者様は非常に多いです。
注射は痛いですか?どのような効果がありますか?
痛みを抑えるだけでなく、診断的な意味合いもあります。 当院では超音波(エコー)ガイド下で正確に患部へ注射を行います。炎症を抑えるステロイドや、局所麻酔薬などを使用します。「注射で痛みが消えた」場合、痛みの原因が関節内にあることの証明にもなり、その後の治療方針決定に役立ちます。
股関節が痛い時、運動やストレッチはしても良いですか?
痛みの種類によります。自己判断での無理なストレッチは避けてください。 痛みを我慢しての運動は症状を悪化させるリスクがあります。特に「あぐら」や「内股」など、特定のポーズで痛む場合はその動きを避けてください。医師や理学療法士が、現在の患者様の状態に合わせた安全な運動メニューを指導します。
どのような寝方が股関節に負担をかけませんか?
痛む側を上にする、または膝の間にクッションを挟むのがおすすめです。 仰向けで寝る場合は、膝の下に枕を入れて軽く曲げると関節が緩み、楽になります。横向きの場合は、痛い方を上にし、両膝の間にクッションや抱き枕を挟むと、股関節が安定し痛みが軽減されやすくなります。

